業務アプリを開発会社に依頼する際のポイントを解説!初めてのアプリ外注で失敗しないためのベンダーの選び方や注意点とは

業務アプリを開発会社に依頼する際のポイントを解説!初めてのアプリ外注で失敗しないためのベンダーの選び方や注意点とは

DXやAI活用が推進される近年、業務効率化や生産性向上を目的として社内で業務アプリの導入を検討する企業が増えています。しかし、外注先の選定を誤ったり準備不足のままアプリの発注をしてしまうと、「機能や品質が不十分な状態でリリースせざるを得なくなる」「予算を超過したコストがかかってしまう」などのトラブルになるケースもあります。

本記事では、初めてアプリ開発を外注する担当者が押さえておくべきポイントを、実際の失敗例とともにわかりやすく解説します。

アプリの開発には、サーバー・DB設計、UI/UX、セキュリティ、運用設計など多くの専門知識が必要です。特に業務で使用するアプリの場合は、十分に経験を積んだアプリ開発エンジニアでなければ社内で浸透するアプリを作り上げることは困難です。

一方で、近年は非エンジニアでもアプリを制作できるノーコード・ローコードツールが普及しているため、情報システム部など比較的ITに精通した人材であれば内製化は不可能ではありません。しかし、こうしたツールは多様な企業への導入を前提としているため汎用性の高さが重視されており、デフォルトの機能だけで自社の業務にマッチするアプリを作ることは難しいのが実情です。加えてカスタマイズを行う場合、結局は専門のエンジニアの協力が必要になるため、外注と同程度のコストが発生することもあります。

以上の理由により、現時点ではアプリ開発は多くの企業にとって内製よりも開発会社へ外注する方が確実と言えます。

アプリ開発における外注の必要性は紹介した通りですが、だからこそ信頼できる外注パートナーに依頼すること、そしてそのための準備をすることがプロジェクト成功への第一歩と言えます。しかし、現実にはそれがうまくいかずにアプリ開発に失敗する企業が後を絶ちません。

ここでは、実際に起こっているアプリ開発のよくある失敗例を紹介します。

CASE1. 要件が固まっておらず開発中何度も仕様が変わる

アプリ開発の外注経験がない担当者の場合、発注時にどこまで要件を固めておくべきかがわからず、必要な機能や仕様が整理されていないまま依頼してしまうことがあります。本来であれば開発会社がヒアリングを通じて要件を明確化すべきですが、それが不十分なままプロジェクトが進行すると、制作の過程で「この機能も必要だった」「これは実際の業務では使わない」といった追加要望が後から頻発することは珍しくありません。

こうした後出しの仕様変更は、画面設計・実装・テストのやり直しにつながり、プロジェクトの遅延や手戻りを招きます。結果として、当初見積もりには含まれていなかった追加費用が発生し、発注側と開発会社双方に大きな負担がかかってしまいます

CASE2. 価格重視でフリーランスに発注したが品質が不十分

「可能な限りコストを抑えたい」という理由から、紹介やクラウドソーシング経由でフリーランスに発注して失敗してしまうケースは珍しくありません。もちろん開発会社で経験を積んだ優秀なフリーランスも一定数いますが、中には実務経験が浅い人材が混在しているのも事実です。クラウドソーシングで募集を出すと相場の半額以下の見積もりを提案されることがありますが、十分な開発スキルを備えていないフリーランスが応募している可能性もあるため、金額だけで外注先を決定するのは早計と言えるでしょう。

また、納期管理やレスポンスの速度など、プロジェクト進行におけるコミュニケーションの精度も軽視できません。個人で活動している場合はこのような意識が薄いことも多く、発注者が進行管理でストレスを抱えるケースもあります。連絡が途絶えてしまう、進捗が共有されないといったトラブルが重なり、最終的にはプロジェクト自体が立ち行かなくなることも実際に起きています

CASE3. 現場の声が反映されておらず社内に浸透しない

業務アプリ開発では、発注部門と実際に利用する現場で認識がずれていると、完成後に「実務と合わず使いづらい」という問題が起こりやすくなります。現場の業務フローや判断基準を確認しないまま要件を固めてしまうと、操作手順や入力項目が実態と合わず、アプリが業務の妨げになってしまうためです。

その結果、現場に根付かず利用が進まないだけでなく、リリース後に改善要望が相次ぎ、追加の改修コストが発生することもあります。現場へのヒアリングやアンケートを怠ると、かえって費用が膨れ上がり社内浸透にも時間がかかってしまうため注意が必要です。

こうした初めてのアプリ外注の失敗を防ぐためには、外注先を価格や知名度だけで判断せず、複数の観点から総合的に評価することが大切です。開発会社選定のうえでチェックしておくべきポイントを紹介します。

業界や業務に対する理解が深いか

業務アプリ開発の目的は単にリリースすることではなく、実際に使用する従業員がそのアプリを日常的に活用するようになり、業務改善に役立てたり生産性向上につなげることです。そのように考えると、開発会社に求めるべきは「現場の業務を十分に理解したうえで最適な機能や使いやすさを備えたアプリを作ること」であり、一般向けにアプリストアで公開されるようなアプリで求められる「かっこいいデザイン」や「面白い操作性」は二の次です。

見映えだけを重視して業務理解が不足している開発会社に依頼してしまうと、仕様の意図を正確に汲み取れず、現場のフローと合わない機能構成や日常業務に組み込みづらい画面設計になってしまうリスクがあります。逆に、業界特有のルールや現場の判断基準を理解した開発会社であれば、業務の負担を減らし、定着しやすい設計を最初から提案できるため、プロジェクトの成功率は格段に高まるでしょう。

業務アプリの開発実績が豊富か

アプリ開発会社はホームページに過去の開発実績を掲載している会社も多いので、外注先を探すにはまずはホームページを確認するのがおすすめです。実績を閲覧する際の注意点として、単に対応件数やデザイン性だけを見るのではなく、搭載している機能や活用方法、どのような課題をどんな設計で解決したかまで確認できると実力のある会社かどうかを見極めやすいです。これらがホームページに掲載していない場合は、一度問い合わせてみるといいでしょう。

理想としては、自社と同業種、もしくは類似した内容のアプリ開発やシステム開発の実績が豊富な会社に依頼することです。その場合は開発会社が必要機能の傾向や課題の共通点を把握しており積極的に提案してもらえる可能性が高いため、要件定義がスムーズに進みます。

料金体系が明確か

見積もりや料金体系の透明性は、外注先選びで必ず確認しておきたいポイントです。初期の開発費用とその内訳を把握するだけでなく、リリース後の運用・保守に関わるランニングコストも確認しておくと長期的な予算を検討しやすいでしょう。

また、業務アプリは開発手法によって価格が大きく変わるため、スクラッチ・ローコード・ノーコードなど、それぞれのメリットとデメリットを説明したうえで、最適な構成を提案してくれるかどうかも重要です。依頼側の予算や要件を踏まえて、必要な機能の優先順位を整理しながら見積もりを提示してくれる開発会社は、プロジェクト管理の精度も高い傾向があります。

「最初の見積もりでは予算内に収まっていたのに、最終的に予算オーバーしてしまった」といった事態を避けるためにも、あらかじめ料金体系はチェックしておきましょう。

受発注マッチングサイト「PRONIアイミツ」の調査によれば、2019〜2024年におけるアプリ開発費用の中央値はおよそ300万円とされています。ただし、この数字はあくまで目安であり、実際の費用はアプリの種類や機能の複雑さ、利用する開発手法、セキュリティ要件、連携システムの範囲などによって大きく変動します。

外注における費用相場に関しては、以下の記事で実際の開発事例や機能例とともに紹介しているので、自社の求めるアプリの要件と照らし合わせながら確認してみてください。

アプリ開発は「準備が8割」と言えるほど、発注前の準備段階が非常に重要です。開発会社に丸投げしたり、走り出してから考えるというスタンスで臨むと、円滑なプロジェクトの進行は難しいでしょう。ここでは、発注前に必ず押さえておきたい準備のポイントを紹介します。

1. 必要な機能を明確にする

まず取り組むべきなのは、業務のどこを効率化したいのか、どの機能が必須なのかを整理することです。現場の課題や日常業務の流れを把握することで、アプリに必要な要件がクリアになります。発注を担う部門だけで判断せず、利用者である現場の声も初期段階から取り入れることが重要です。

機能や仕様を整理するうえで、RFP(提案依頼書)を作成しておくと開発会社側が要件を正確に理解しやすく、見積もりの精度も高まります。RFPのテンプレートはWeb上で公開されているものもあるので、活用してみるといいでしょう。

2. 作りたいアプリに近い事例を集める

開発会社に要望を伝える際、「どのような画面が必要か」「どんな動きを想定しているのか」などを共有できると要件定義がスムーズになります。そのために一般公開されている既存のアプリや他社事例を参考にし、理想に近い画面構成や機能例を集めておくのがおすすめです。簡単なワイヤーフレームや画面遷移のラフを作成しておくと、開発会社との認識のズレを防ぎやすくなります

弊社でも以下の記事で一部事例を公開しているため、ぜひご参考ください。

3. 社内の意見をすり合わせる

社内で事前に合意形成しておくことは基本的なプロセスですが、業務アプリ開発では特に重要です。大手企業でよく見られるのが、担当者は開発会社からの提案や制作過程のアウトプットに納得していても、プロジェクト後半になって別の決裁者や関連部門から突発的な指摘が入り、追加要件や大幅な仕様変更を求められるケースです。

こうなると、手戻りにより追加費用が発生するだけでなく、開発会社を含めた関係者全体のモチベーション低下を招き、最終的には品質や納期に影響を及ぼすリスクがあります。このような事態を防ぐためにも、あらかじめ「誰が確認者なのか」「どの段階で誰がチェックするのか」といったフローを明確にし、可能であればキックオフミーティングや定例会議に関係者全員が参加できる体制を整えておくのが理想です。

4. 信頼できるアプリ開発会社を探す

アプリ開発のプロジェクトは一般的に数か月、長いと1年以上かかることも珍しくないので、特に初めてのアプリ開発の場合は信頼して任せられる開発会社を選ぶことは非常に重要です。候補となる開発会社のホームページで専門性や実績、料金体系やサポート体制などを確認し、必要に応じて相見積もりを取りましょう。

初回の打ち合わせまでに、上記「1. 必要な機能を明確にする」で確定した仕様や機能を開発会社に共有し、あらかじめ確認したいことは洗い出しておくと早い段階で開発会社から有益な提案を受けられるはずです。こうした準備を怠らないことが、アプリ開発成功のための第一歩と言えます。

初めての業務アプリ開発を成功させるには、企業の業務や課題を理解しながら伴走してくれる外部パートナーの存在が欠かせません。知名度や技術力だけで判断するのではなく、自社の業務に寄り添い、共にプロジェクトを前に進められる開発会社を見つけることが大切です。

本記事で紹介したポイントを参考に、自社の求めるアプリを形にしてくれる理想の開発会社を探しましょう。